『三国志のことわざ「登竜門」』
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『三国志のことわざ』

今回の諺(ことわざ)は、『登竜門』です。
英語では、「Gateway to success」または、「Route to success」です。

『ことわざの意味』

意味は、「そこを通り抜ければ、社会に認められ、出世の糸口となる関門のこと」(ことわざ辞典)
または、「困難ではあるが、そこを突破すれば立身出世できる関門」(広辞苑)

つまり、出世するために「どうしても通らねばならない地点」、成功するために「突破しなければならない場所、人、出来事」ということです。

『ことわざの由来』

 「登竜門」という諺が三国志に由来しているということをご存知ない方も多いのではないでしょうか。

「登竜」は、中国の黄河上流にある急流の名前です。
正しくは「龍門」と称する急流があり、そこはおびただしい魚が群れていたが、滝登りのできる魚はめったにいないといわれ、この「龍門」を登った魚はやがて龍になる、との古(いにしえ)のいい伝えがあったことからきています。

『ことわざの発生故事』

漢帝国は儒教を国教として成立した国家でした。
この漢の時代に中央政権の内部にまで出世をするためには大きく言うと二つの勢力からの指示を得る必要がありました。
一つは皇帝の外戚、つまり皇帝の妻(正妻および側室)の一族。
もう一つは宦官(去勢した男性のこと)です。
中央政権まで上り詰めるにはこの二つのどちらかと縁をつけ、認められる必要があったのです。

ですが、皇帝の一族や皇帝の側近くにいる宦官と接する機会は地方の官職につくものには縁がありません。
ましてこれから出世していこうとする若者には縁もゆかりもないことが殆どです。
自分の生まれた家系が貴族としての地位を得ている家系に生れればチャンスはありますが、そうでない大半の人にはチャンスはありません。

しかし、別の方法はありました。
地方の役人を決める風習には中央とは違った制度があり、それは各地の名士に推薦されたものが、職を得るというシステムとなっていたのです。
そのシステムは、儒教が大切にする「考」を身につけているということが認められるうえでの須条件となっていました。
清い心を持ち、親には「考」、国家には「忠」を持つと名士たちに認められることで、名士の推薦をもらい役職に就いたり、出世したりしていたのです。
(注:名士とは儒教の学問を治め、志を持ち天下国家を論じることができる実力者のこと)

その名士のなかでも特に尊敬されていた人物の一人が李膺(りよう)という人です。

名士の中の名士とされていた李膺に認められることが「登竜門」と呼ばれていたのです。

この李膺の知遇を得ることは難しく、反面、価値が高かったということです。
李膺は、曹操が世に出た初期の頃に曹操が自らのモデルとした人物の一人だと言われています。

また、李膺に認められた“士”の多くが、のちの曹操の政権や軍事に参加しています
そういった意味では三国志前半の覇者である曹操に大きな影響を与えた人物が李膺なのです。
この李膺に認められれば出世できると思われていたのです。
(実際に出世していきました)

『ことわざからの学び』

こうしたことは現代でも同じではないでしょうか。
出世するためには、引きあげてくれるキーパーソンに認められる必要があります。

三国志でいえば、諸葛亮(孔明)が劉備に三顧の礼をもって迎え入れられた故事は、諸葛亮が「臥龍鳳雛」(地に伏す龍と鳳凰のヒナ)の臥龍と呼ばれていたからですが、それだけでは諸葛亮は世に出られなかったと思われます。
諸葛亮の師である襄陽学の名士司馬徽(水鏡先生)に実力を認められていたことが重要です。
当時の荊州(特に襄陽)は名士が多く集まる場所で、その襄陽の名士の中でも人物眼に優れていると評判だった司馬徽(水鏡先生)に認められるということは、荊州における「登竜門」であったのです。
司馬徽の推薦があったからこそ、劉備は諸葛亮を軍師として迎え入れたのです。

歴史をつぶさに見てみると、英雄や歴史を動かす人物には必ずその人物を育て、世に出るスプリングボードの役割をする人物が存在します。
その中でも「登竜門」、つまり、キーパーソンになる人物に認められることで出世の扉が開いてきます。
出世の扉を開く「登竜門」を通らずしては、望みの目的地にたどり着くことは出来ないのです。

「登竜門」にあたる人物は、すでにそばにいるかもしれないし、これから出会うかもしれません。
どちらにしても、「登竜門」をくぐることは成功する人生を送るためには重要なことです。

【ことわざからの教訓】

「人が立身出世するためには、キーパーソン的な人物に認められることが大切である」

「運命の出会いが出世の扉を開く鍵となる」

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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