『張飛伝3 ~張飛の魅力~』
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【張飛の魅力】

粗暴な漢(おとこ)張飛
だが、中国でも日本でも意外に人気がある。
なぜか?

それは関羽が民衆に慕われる理由と同じである。
張飛は“義兄弟の契り”を結んだ兄貴分の劉備に対して“報いられることを期待しない忠誠”を貫き通したからである。

関羽のようなスカウト話はないものの、関羽と同等の忠誠心を持っていた。
日本人は「忠義」が好きである。

張飛の生き様は「見返りを求めず」「約束をたがえず」「命を顧みず」、そして、どこまでも「忠義を貫く」である。

粗暴な面はあるものの、その愚かな粗暴さを覆い尽くすほどの長所を持っていたのだ。
だから、張飛は「暴れん坊だけど、憎めない奴」となる。

ただし、それは民衆の立場からである。
張飛の部下の立場に立てば、真逆の気持ちになるだろう。
私としても張飛の部下はご免被りたい。
でも、仲間だったらどんなに心強いことだろうか!

【張飛の対人関係スキル】

関羽とともに常に劉備と共にあった張飛だったが、人との接し方は対照的であった。
(関羽伝にて一部語りました)

関羽と張飛の違いを比較すると、
「部下を大事にした関羽」「名士を尊重した張飛」と言える。

関羽は、兵卒を厚遇したが名士に対しては傲慢な態度を取った。
一方、張飛は君子(身分の高い人)を敬愛したが小人(身分の低い人)に憐れみをかけることはなかった。
つまり、張飛は身分(肩書)で他人を評価する傾向性を持っていた、ということである。

劉備は、この張飛の性格を常に心配して諫めていた。
だが、結局、関羽の敵討ちの呉討伐戦の出撃前に部下の裏切りにあってしまう。
「身から出た錆」というところだろう。

《張飛が君子を愛したエピソード》

劉備が益州攻略戦を展開していたときのこと。
龐統が不慮の死を遂げてしまったため、急遽荊州の諸葛亮を呼び寄せる。
諸葛亮は、荊州軍の武将として張飛と趙雲を引き連れて援軍に赴く。
そのときに張飛は江州で巴郡太守の厳顔を撃破して生け捕りにしている。
張飛は厳顔に対して「大軍がやってきたのになぜ抗戦したのか」と怒鳴りつける。
すると厳顔は、「あなた方は無礼にもわが州を侵略した。わが州には首を刎ねられる将軍はいても、降伏する将軍はいない」と剛毅をみせた。
怒った張飛は側近に命じて斬らせようとするが、厳顔が顔色一つ変えず「首を斬るならさっさと斬れ。どうして腹を立てることがある」と言い放った。
張飛は、厳顔の剛毅な態度に感心して、厳顔を釈放したばかりか賓客として遇したという。

君子を敬愛した張飛らしいエピソードであるが、その背後に諸葛亮の指示があったことは否定できない。
つまり、益州攻略の後に益州の経営をするために、仕える人材を残し、無用な恨みを買わないようにする政治外交上の目的があった。
張飛は諸葛亮の支持を守ったということだ。
こういったエピソードは、ビジネスの世界にもあてはまる。

【成長する張飛】

益州平定後、張飛は諸葛亮や関羽とともに、金500芹(きん)、銀1,000芹ほかの多くの恩賞を得て巴西太守に任じられた。
この巴西太守は、北は漢中、東は荊州に隣接し、郡内を流れる河川を利用すれば長江にも出られる戦略上の要地である。
これは劉備の張飛への信頼度を表わすものである。
張飛が見せた厳顔への対応などを劉備が高く評価したものだろう。
この時期の張飛は単なる無骨ものの武将から一歩成長した武将の片鱗を見せている。

215年、漢中の張魯を制圧した曹操は、漢中の抑えとして夏侯淵に張ゴウと徐晃のふたりを副将として、劉備への備えとした。
このとき張ゴウが別働部隊を組織し、積極的に劉備陣営の領土に踏み込んでくる。
巴東、巴西の2郡を降し、さらにその住民を漢中に移住させようと画策した。
これに対応したのが張飛だった。
両者の勝負は容易に決せず、両軍の対立は50日以上に及んだ。
そこで張飛は、精鋭1万の別部隊を率いて別の街道から張ゴウを攻め、山道で長く伸びた軍勢の前後の連携を分断することに成功する。
張ゴウは、わずか10余人の親衛隊だけを連れ、馬も捨てて間道を縫って山沿いに退却する事態に追い込まれる。
曹操軍の名将張ゴウに張飛は見事作戦勝ちを収めた。
これは武勇だけの戦いでなく、知恵による戦いができるように張飛が成長したことを意味する。

三国志の読者は張飛が個人的武勇のみの男と思われている方が多いのではないでしょうか。
だが、益州攻略の時期から単なる個人的武勇の武将から万単位の軍勢の統率者として成長を遂げている。
恐らく諸葛亮の軍略に学び、諸葛亮の指揮に準じてきたことが、張飛を知恵による作戦勝ちができる武将へと成長させたのだろう。
もし、呉討伐に成長した張飛が参戦していれば、呉は滅んだかもしれない。
あ~、歴史の皮肉がここにある!

張飛伝4に続く。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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