【史実のなかの曹操】 《中国民衆からの評価》 歴史上、曹操ほど毀誉褒貶の激しい人物はいない。中国の伝統的な演劇である京劇では、曹操を演じる隈取(くまどり)を白で地塗りする。中国人の伝統的な色彩感覚からすれば、鉛色に近い色は“奸悪のシンボルカラー”である。つまり、そのような色で隈取された曹操という人物は、悪賢くてしかも残忍な姦雄だとみなされているのだ。 曹操が、中国民衆から憎悪の対象とされているのには理由がある。ひとつは、彼の個性があまりにも強烈で他の類型的な凡人にはとうてい真似できないものだか...